小笠原の思い出 ー稚亀の放流編ー2006/09/07 20:02

かなりの間更新をさぼってしまいました。
もう夏も終わろうとしていますが,小笠原シリーズでひっぱります。

7月29日の夜8:00から宮之浜海岸で,
稚亀の放流があるというので行ってみました。
ウミガメの保護活動をしている
小笠原海洋センターの主催だそうです。
早めに行って待っていると,8時少し前に職員の方が
発泡スチロールのケースを2つ抱えてやってきました。
中からガサゴソと稚亀たちがはいまわる音が聞こえてきます。
海岸のまわりは民家はおろか街灯も一切なく真っ暗闇です。

稚亀の放流が夜に行われるのには理由があります。
卵からふ化した稚亀はしばらく砂の中で過ごした後,
夜になって砂浜の温度が下がった頃にはい出してきて,
大海原に向かって旅立つそうです。
できるだけ生まれたばかりの稚亀の行動パターンに合わせるため,
放流は夜に行われるのだそうです。
ちなみに,少しの間飼育した後に行われる,
「子亀」の放流は昼間に行われているみたいです。

また,放流にこの宮之浜海岸が利用されるのにも理由があります。
稚亀たちは海面のかすかな明るさを頼りに海に戻っていくので,
人工的な光がある海岸では,
帰る方向を間違える稚亀が出てきてしまうのです。
そこで大村海岸など街の光が強い海岸では,
産み落とされた卵を保護して人工的に孵化させ,
この宮之浜海岸で放流するのだそうです。

この日は月もなくほんとの闇夜。
夜空には満天の星が瞬いています。
さっきまでゴソゴソしていた稚亀たちは,
眠ってしまったのか急におとなしくなりました。
このまま放流してしまうと寝ぼけて帰れない子がいたりするので,
しばらく光を当てて刺激を与えて活発にします。
この時触らせてもらいましたが,
甲羅がまだ柔らかくぷにぷにです。
甲羅よりも頭や手足が大きく,とてもかわいらしい。
こんな体で大海原に旅立っていくとはなんと健気な。

いよいよ放流となると,全ての光を消し,
集まった人たちで花道をつくって
波打ち際から3mくらいのところで箱をひっくり返します。
砂の上を黒い物体がのそのそと海に向かって動いていきます。
月夜ならその姿をよく観察できたのでしょうが,
残念ながら真っ暗闇。
目が慣れる間もなく稚亀たちは,
みんな元気に海に泳いでいきました。

立派に成長しておとなになり,
再び父島に帰ってくるのは20〜30年後。
それもわずか0.3%の生存率だそうです。
がんばれ稚亀。

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どこんじょうせんすいくらぶ
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